ICT保育に抵抗がある園で起きやすい問題とは?

保育観・園の方針

自分の園はICT保育の導入に抵抗があるみたいですが、現場ではどんな問題が起きやすいですか?

ICT導入に抵抗がある園では、業務の属人化や情報共有の遅れ、そして職員間の不公平感といった問題が起きやすいです。
特に紙ベースでの煩雑な作業が残り、保育士さんの残業増加につながるリスクが高まります。デジタル化による効率化の恩恵を受けられないことが根本的な原因です。

慣れたやり方への固執が招く「業務の非効率化」

多くの保育園では、長年続けてきた紙や口頭での情報伝達・記録方法に慣れ親しんでおり、新しいシステムへの切り替えには心理的な抵抗が伴うものです。特にベテランの先生方ほど、慣れたやり方を変えることへの負担を感じやすい傾向があります。

この「慣れ」への固執が、結果として業務の非効率化を招きます。例えば、連絡帳の記入、登降園時間の記録、保育日誌の作成など、手書きの作業が一つ残るだけで、その後の集計や転記に多くの時間と労力がかかります。

意外な視点として、ICT化に抵抗する背景には「自分の仕事が誰でもできるようになることへの不安」がある場合もあります。属人化していた複雑な作業がシステムによって標準化されることで、自身の専門性や存在価値が薄れると感じてしまう先生もいるのです。

ICT化に抵抗がある園では、この非効率な作業のために、本来子どもと向き合うべき時間が削られがちになります。反対に、一歩踏み出して少しずつでもデジタル化を進めることが、先生方自身の働きやすさにつながるというメリットを理解することが大切です。

待遇改善が遠のく!現場の「残業体質」と「不公平感」

ICT導入に抵抗があると、記録や事務作業の効率が上がらず、結果として保育士さんの残業が慢性化しやすいという深刻な問題が生じます。特に連絡帳や指導案といったコアな記録業務が手書きのままだと、持ち帰り仕事が増え、長時間労働の温床となってしまいます。

園がデジタル化に踏み切れない背景には、「システム導入にかかる費用が高い」「操作方法を覚えるのが面倒」といった理由があります。しかし、そのコストを削減した結果、現場の保育士さんの人件費(残業代)や精神的な負担が増加しているという実態に目を向ける必要があります。

また、若い先生やデジタルに慣れた先生が「手書き作業」の効率の悪さに不満を感じる一方で、ベテランの先生は「新しいシステムを覚えたくない」という意識から、仕事が特定の人に偏るなど、職員間の不公平感が生まれることも大きな問題です。

ICT化は単なるツール導入ではなく、働く環境を改善し、結果的に残業を減らしてワークライフバランスを向上させるための手段です。待遇改善を求める際は、「業務の効率化」という視点から園に提案することも有効な選択肢となります。

世代間のギャップと保護者との情報共有の遅れ

ICTに抵抗がある園では、世代間のデジタルギャップが、日々の保育業務における情報共有の壁となることがあります。ベテランの先生は長年の経験に基づく「暗黙知」を重視し、若手の先生は「明確な記録やデータ」を重視するなど、情報の捉え方や共有の仕方に違いが生じます。

例えば、日々の連絡事項が口頭やホワイトボードに依存していると、欠席連絡やアレルギー情報などの重要な情報が一部の先生にしか伝わらない情報の属人化が起こりやすくなります。これが、重大な事故やミスの原因になりかねません。

さらに、保護者とのコミュニケーションにおいても遅れが生じます。近年、保護者の多くは園からの連絡をアプリやメールで受け取ることを望んでいます。紙の連絡帳や手書きのおたよりにこだわることで、保護者の利便性が損なわれ、園への信頼度に影響を与える可能性もあります。

ライフステージの変化に伴い、時短勤務や子育て中の保育士さんは、園にいる時間が限られるため、いつでも情報を確認できるデジタルツールは必須です。ICT導入は、職員全員が同じ情報を共有し、安全で質の高い保育を提供する土台作りに欠かせません。

抵抗感を乗り越え、「ゆとりある保育」を実現するために

ICT保育への抵抗は、「新しいことを始める大変さ」からくる自然な感情です。しかし、その抵抗を乗り越えずにいると、業務負担は減らず、保育士さん自身の心身の疲弊につながってしまうという現実があります。

もしあなたの園がICT化に抵抗がある状況でも、悲観する必要はありません。まずは「連絡帳だけアプリに移行する」「登降園の打刻だけデジタル化する」など、小さな一歩から提案してみてはいかがでしょうか。小さな成功体験が、園全体の抵抗感を少しずつ減らしていきます。

大切なのは、ICTツールは「仕事を増やすもの」ではなく、「手間を減らし、子どもに向き合う時間を生み出すもの」という認識を共有することです。ツールが先生方の味方になるというメリットを、周囲の先生や園長先生に優しく伝えてみてください。

あなたの保育スキルとICTツールの力が合わされば、きっと残業が減り、心にゆとりが生まれます。そのゆとりこそが、子どもたち一人ひとりの成長を丁寧に見つめる、質の高い保育につながっていくのです。前向きな提案で、園の働き方を変えていきましょう。

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